おなかが空くということは辛いことですね。

犬たちはごはんを食べることが大好きです。

だから

ごはんの時間になると催促してきたり、

ごはんの袋を空ける音がすると飛んで来たりします。

目を「ごはん♡」にして期待する愛犬のその様子はとても愛らしいものです。

 

でも時にその様子を見て「食い意地が張っている」「みっともない」と感じる人もいるようです。

 

犬たちがごはんに対してこんなにも必死になるのは、学習の側面から説明ができます。

それを知っていただければ、ちょっとは感じ方が変わるのではないかと期待しています。

 

愛犬がごはんの時間になると催促してきたり、袋を開ける音がすると飛んで来たりするということ。

もともとは、その時間も、袋の空く音も、犬たちにとっては何の意味もないものなので反応もしていなかったと思うんです。

でも日常生活の中で犬たちが、その時間になると、その袋が開く音がすると、ごはんが出てきた!ということを経験してきたことによって、学習によって時間や音がごはんと結びついたのですね。

この時に犬たちの体の中で何が起こっているか、それを知るヒントになる事が「心理学からみた食べる行動」という本に詳しく書かれていたので取り上げさせていただきます。

 

上記にあるような“時間”や“袋の音”のように学習によって結びついた「ごはんを予感させるもの」は、その出現によって実際に血糖値が下がるということが、ラットを対象にした研究で明らかになっているそうです。

自由摂食状態のラットが、1日の間に決まった時間に何回かにまとめて食事をとるようになり、食事前のその時間になると血糖値が急に下がっているということが確認されました。

そこでなぜ急に血糖値が下がるのかを調べた研究です。

その研究では、時間とごはんが結びつけられたラット(第1グループ)と、明確に分かるニオイとごはんが結びつけられたラット(第2グループ)と、時間とニオイが結びつけられていないラット(第3グループ)を対象に、ごはんを予感させた時のインスリン値を測定した研究です。

その結果、第1、第2グループのラットたちのインスリン値は明らかに高かったそうです。

時間やニオイといったごはんを予感させるものが、インスリンの分泌を促しているということを示しています。

インスリンは、血糖値を下げるために膵臓から分泌されるホルモンです。

ごはんを予感させるものがインスリンの分泌を促すのであれば、

「血糖値が下がるからごはんを食べる」ではなく、

「まもなくごはんを食べるから血糖値が下がる」という逆説的な現象が生じていると考えることができる、とこの本では紹介されています。

とても興味深いですね。

 

インスリンが分泌され血糖値が下がると、視床下部が刺激され空腹を感じるというのは有名な話です。

ということは

「おなかが空いたからごはんを食べる」ではなく

「まもなくごはんを食べるからおなかが空く」とも言えるのではないでしょうか。

 

 

おなかが空いているという状態は、食べ物を介した学習の強い動機づけになります。

例えば、

ごはんの袋を開ける音がすると吠え始める犬がいるとします。

袋を開ける音はごはんを予感させるものでもあり、それによって血糖値が下がり、その犬は空腹を感じているかもしれません。

そしてその後に「吠えたらごはんが食べられた」という事を経験した犬のその“吠え”は、空腹感という動機づけもあって強く定着します。

犬のしつけ方法が紹介されているインターネットの記事で、「ごはん前の愛犬の吠えには無視をしましょう」と書かれていることがあります。よく目にします。

でも突然無視をすれば、犬たちが必死になるのは当然ですね。

強く定着しているその吠えがとても激しく出るのは当然です。

吠えたらごはんがもらえないということを、犬たちはすぐに理解できるわけもなく、

空腹を感じながら激しく興奮して吠え続けるのは、とても辛い状態でしょう。

 

ここで考えてもらいたいことがあります。

実際に血糖値が下がり空腹を感じていることも、吠えた後にごはんが出てきたという経験で行動が定着している事も、犬自身の意思とは関係が無いということです。

繰り返します。

ごはんを予感する刺激の出現も、空腹感が動機づけとなってごはんによる吠えが強く定着している事も、本人の意思ではなく周りの環境によって影響を受けているということです。

 

だから

 

必死になっている愛犬を食い意地が張ってみっともないなんて思わないであげてください。

吠える愛犬をわがままだとか言わないであげてください。

たぶん、本人もそうとう辛いと思うんです。

 

 

わがままだから、なまいきだから、調子に乗っているから、自分の方がエライと思っているから、、

このように問題行動を抱えた犬を悪者にしてしまうと、悪は罰せられるべきという方向に意識が向いてしまいます。

厳しく罰せられることが当然の報いと思われるようになってしまいます。

それはとても残念な事です。

 

もしも他に問題を解決できる方法があるのなら、そちらを優先させてあげませんか?