ドッグトレーニングにおける体罰問題

体罰を用いることで有名なアメリカのドッグトレーナーがスコットランドで講演を開くことを計画していることに対して、彼の講演を阻むために署名活動が行われています。

スコットランドSPCA(動物虐待防止協会)はテレビを通じて彼のトレーニング方法に言及し、講演には参加しないように訴えています。

スコットランドSPCAが出したこの声明の翻訳も載せておきます。

私たちはジェフ・ゲルマンの方法に同意しません。動物福祉は私たちの主要な懸念事項ですが、スコットランドでしか活動できません。 残念ながら、他の国で発生したインシデントを調査することはできません。他の国で防止する権限はありません。 しかし、ジェフ・ゲルマンがスコットランドにいる間に動物を傷つけることが証明されていることをした場合、それは犯罪となり、調査を開始します。

 

現在スコットランドでこのような事案が発生しているようです。

ドッグトレーニングにおける体罰の問題は日本だけではありませんね。

私も彼のトレーニング方法を見ましたが、やはり犬が体罰を受ける光景は何度見ても慣れることはありません。本当に、、胸がえぐられます。。

 

私はこれまでにずっと体罰に反対する立場にいます。

そこで私が感じることは、相手の心情に訴えようとしてもなかなか届かないという事です。

心情に訴えるような形では、、

「殺処分を逃れるためには、犬を救うためには、仕方がない

といった言葉で簡単にあしらわれてしまいます。

「感情的に否定するのはプロとしてどうなのか」

と言われたこともあります。

 

だから私は体罰について語る際は、心情に訴えるより、できるだけ効果について言及するようにしています。

 

体罰を用いて犬の問題行動を減少させる方法は、主に正の弱化という現象に基づいておこなわれています。

用語解説

正の弱化とは、「行動の直後に刺激が出現・増加すると、その行動は将来起こりにくくなる」という現象です。

 

この正の弱化という現象は、熱い鍋に触れて火傷をしたからその鍋には触らなくなる、というように身を守るためにはなくてはならない学習の一つなのですが、他者の行動を制御する手段としておこなわれる場合、多くの問題が出てきます。

弱化の手続きを確実に成功させるためには多くの条件を満たす必要があり、弱化を行ったとしてもそこには多くの副作用がもたらされるからです。

以下のリンク先にある表1と表2をご覧ください。

参照:反応抑制手続きとしての弱化 : 自己矛盾の行動随伴性(表1、表2)

 

参照にたくさんの専門用語があり申し訳ありません。

特に難しいと感じた箇所をできる範囲で解説させていただきます。

●嫌子

嫌子とは、行動後に出現することでその行動を弱めたり、行動後に消失することでその行動を強めたりする刺激です。強化・弱化の原理を一般的に分かりやすく説明するために用いられる用語です。

体罰や叱責、脅し、大きな音、刺激臭といった主に嫌悪的刺激を指します。

好子とは、逆の作用をもたらす刺激です。

 

●表1-7 嫌子は好子の呈示と弁別的に連合していないこと

例えば、愛犬がゴミ箱をあさると叱られたという経験によりゴミ箱をあさらなくなったとします。でも飼い主がいない時にゴミ箱をあさると残飯を食べることができた。このような経験をした犬は飼い主のいる時にはゴミ箱をあさらない、飼い主がいない時にはゴミ箱をあさるというようになります。これでは行動を抑制することはできません。

 

●表1-8 嫌子は消去の弁別刺激であること(嫌子が強化の弁別刺激でないこと)

例えば、叱ることで愛犬の好ましくない行動(唸り、噛みつき)が出現した場合、そこで叱ることをやめると、「噛みついたら叱責が止んだ」という状況になり、その行動は強化されます。だから愛犬が噛みついたとしても叱り続ける必要があるという事です。そんなことできるでしょうか。。

 

参照の表1、表2にある通り、弱化を成功させるためには14もの条件を満たす必要があり、弱化を行ったとしても11もの副次的効果がもたらされます。

体罰によって問題行動をやめさせるのって、とても難しいことだと思いませんか?

犬の問題行動が激しくなればなるほど、条件は厳しくなり、もたらされる副次的効果も増大します。

 

このような考えもあり、体罰は行ったとしてもうまくいかない方法だと私は考えています。

(もしもうまくいったのならそれは幸運であり再現性には疑問がある)

もしも体罰以外に方法があるなら、まずはその方法を行うべきではないでしょうか。

 

体罰や叱責といった嫌悪的刺激で問題行動を減少させる方法以外にどのような方法があるかを紹介させていただいております。

 

 

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