「オヤツをあげながら……」の落とし穴

爪切りやブラッシングなど愛犬の嫌がることをする時、オヤツを食べさせながら行っている方はいらっしゃると思います。

私自身もそのような対応を提案させていただくことがあります。

今回はその方法の気を付ける事について書いていきます。

今回の記事ではオヤツという言葉を使っていますが、それは「愛犬の大好きな食べ物」という意味です。主食のドライーフードが大好きならそれも含まれます。

 

 

愛犬が嫌がる事ってありますよね。

爪切りやブラッシング、中には抱っこや撫でるだけでも嫌がって怒る子もいます。

そういった子にはどのように接していけばいいのでしょうか。

 

まず知っておいていただきたいことは、基本的に犬を嫌がらせれば嫌がらせるほどその嫌がる行動は悪化していくということです。(負の強化による悪化)

そこで大好きなオヤツをあげながら接するという方法がよく提案されます。

オヤツをあげながらブラッシングをする、オヤツをかじらせながら爪切りする、という感じですね。

嫌がる行動が悪化すると犬は暴れて本気で噛みつくようにもなっていくので、最初から嫌がらずにさせてくれるその「オヤツをあげながら…」という方法は、行動の悪化を防ぐ予防としての効果もあります。

 

しかし気を付けていただきたいことがあります。

オヤツをあげながらだとしても、その場の不快感が大きすぎると、*オヤツとその不快感が結びついてしまいます。

そうするとオヤツ自体を警戒するようになってしまいます。

オヤツを差し出されると、「また何かされるのでは!」と感じるようになるのですね。

大好きだったはずのオヤツを喜んで食べることができなくなるという事はとても悲しいことです。

そうならないために、ヤツをあげながらだとしても接し方は優しく丁寧に行わなければいけません。

どれくらい優しく接すればいいのかは、その子その子によって違います。

不快感の抱き方はそれぞれ違うからです。

だから愛犬の反応をよく観察しながら進めていく必要があります。

(* 食行動に不快刺激が随伴することでその食行動は弱化されます。またオヤツが負の強化で形成される行動の弁別刺激にもなるため、オヤツを警戒するようにもなります。)

 

こういった方法は、「オヤツがないと何もできない」と揶揄されることもあります。でもそれは逆に言えば「オヤツがあればできる」という事でもあります。

体を触ることもできないくらいの攻撃行動を示す犬にとっては、オヤツがあればできるというだけでQOL(生活の質)はグッと高まります。

怒るからリードも付けられなかったが、オヤツをあげながらならリードを付けることができたとします。そうするとその子は外に連れ出してもらえるようにもなります。その子の世界が広がるという事です。

もちろんオヤツが無くてもできるようになるためにはトレーニングが必要です。

 

このようにオヤツをあげながら行う方法は、応急処置的な方法と考えることもできます。

愛犬の困った行動を悪化させることなく楽しく生活していくためにとても役に立つものだと考えています。