上下関係の何がダメなのか
以前、上下関係についての記事を書かせていただきました。
この記事内でも簡単には触れているのですが、上下関係を築こうとすることの何が問題なのかを書いていきます。
1 問題を重篤化(さらに悪化)させます。
上下関係を築こうとして愛犬に体罰したり厳しく叱ったりすると、犬の防衛的な攻撃行動を引き出してしまいます。そもそも犬は人間のモラルを理解しません。
例えば、絨毯の上におしっこをしてはいけないというルールがあります。なぜおしっこをしてはいけないのでしょう。高級な絨毯だから?シミになるから?不衛生だから?犬からするとそんなことは知ったこっちゃありません。そのような人間の都合を理解させようと愛犬を叱っても犬は理解できないでしょう。なぜ叱られたのか理解できなければ、飼い主から攻撃されたとしか受け取れません。そうなると自分の身を守るために犬は反撃に出ます。
そういった犬の防衛的攻撃行動の出現は、飼い主の体罰行動をエスカレートさせます。その結果、飼い主が激しく噛みつかれてしまったり、愛犬を大きなけがを負わせてしまったりしてしまうケースが多々あります。
2 効果のない方法が提案されます。
上下関係に基づいたトレーニングでは、愛犬の噛みつく行動の原因を「上下関係の逆転」と考えその関係を正そうとトレーニングが提案されます。
上位の動物が優先的に食物を食べていることから、「飼い主が先にごはんを食べましょう」という方法が提案されます。
群れの移動時はリーダーが先頭を歩くということから(実際は間違い)「犬を飼い主に後について歩かせる練習をしましょう」という方法が提案されます。
心理学の行動の原理から考えると、それらの方法に効果がないことが容易に分かります。「飼い主に噛みつく行動」と「飼い主の後ろについて歩かせる」ということに、行動的な繋がりがあるとは考えにくいという事です。
しかし従来のドッグトレーニングではこれまでにそういった効果のない方法が延々と提案され続けてきました。
3 犬を悪者にします。
上下関係という考え方の中に出てくる犬は、「飼い主の座を狙っている」「飼い主を見下している」というようにとても醜悪な動物として書かれています。そしてそのような犬たちは罰せられて当然として厳しい体罰が行われています。
上下関係という言葉は、時に体罰を行うための口実として用いられることさえあります。
上下関係というものを考えなくても、してほしい行動はどんどんしてくれるように、してほしくない行動は犬がその行動をしなくなるように、そんな接し方を行動ひとつひとつに考えていきます。
そうすれば愛犬と仲良く楽しく暮らしていけるはずですよ。