【犬のしつけ】慣れ って何?
ドッグトレーニングにおいて「慣れ」は一つの大きなテーマです。
子犬の社会化の時期には様々なことに子犬を慣れさせておくことが、その後の問題行動を防ぐことに繋がります。
もしも愛犬に苦手なものがあり怖がるなら、それに慣れさせることで犬はもっと暮らしやすくなるかもしれません。
犬たちが少しでも生きやすくなるためにも私たちはできる事を考えます。
今回はこの「慣れ」について考えます。
一般的に 慣れ と言わるこの現象は、主に「馴化」と「レスポンデント条件づけの消去」で説明されます。
専門用語なので少し解説させていただきます。
●馴化
刺激の反復提示によって、生得的反応が徐々に減弱する
●レスポンデント条件づけの消去
条件付けされた刺激の反復提示(条件刺激だけ提示)によって、習得的反応が減弱する
これら二つの区別は、その反応を引き出す刺激が、生得的に反応を引き出すものか、もしくは習得的に反応を引き出すものかで分けられます。
大きな音は生得的に怖がる反応を引き出します。でも何度もその大きな音を聞いていると怖がらなくなります。
もともと何でもない小さな音が怖い体験と結びつくことで、何でもなかったその小さな音が習得的に怖がる反応を引き出すようになります。その後に今度はその小さな音だけを聞いていくと怖がらなくなっていきます。
ただ実際の現場では、その犬の反応が生得的に引き出されているものか、習得的に引き出されているものか、確実に区別することは難しいと思います。
例えば、人間を怖がる犬がいるとします。
子犬の頃から見知らぬ人間と一切かかわってこなかった犬は知らない人間を怖がるようになるでしょう。
一方で、知らない人間から叩かれたり乱暴に触れられたりするような怖い体験をすると、人間とその体験は結び付いて人間を怖がるようになります。
この場合、前者は人間という刺激は生得的に怖がる反応を引き出している。後者は習得的に怖がる反応を引き出していると言えるのではないでしょうか。(私見です。)
でもこれら二つは、その犬がどのような暮らしを送ってきたかを詳しく知る必要がありますし、犬の内面で起こっている“真実”は私たち人間が知ることはなかなか難しいことかもしれません。
これら二つを確実に区別をするのは難しそうです。
ただ、その反応がどちらだとしても、刺激の反復提示によって反応が減弱するという現象は起こります。
トレーニングでの手続きが大きく変わることはないということですね。
だから区別の話に踏み込むのはここまでにします。
色々と書いてきましたが、
簡単にまとめると、慣れとは同じ刺激に何度も接することでその刺激に対して反応しなくなっていくということです。
同じ音を何度も聞くと、その音に反応しなくなっていきます。
同じ物を何度も見ると、それを見ても反応しなくなります。
愛犬に苦手な事に慣れてもらうには、苦手なものを見せないといけない、聞かせないといけない、、
ということになります。
でも
ここで疑問を持たれる飼い主さんがいらっしゃるのではないでしょうか。
散歩中に他の犬を見ると吠えるうちの子は、これまでに何度も犬を見てきたはずなのに一向に吠えなくならないんだけど……と。
ここで知っておきたいことは、慣れはどの子にも生じるという事です。
もちろんその子がこれまでに体験してきた事の経験値や生まれ持った性質によって差は生じますが、どの子にも慣れは生じます。
だから愛犬が苦手なことに一向に慣れないというなら、何が阻害しているのかを考えないといけません。
その阻害している要因について次回は書いていきます。
参考:『行動分析学事典』丸善出版